ユダヤ教徒のアイデンティティ:服装、言語、土地への思い入れ
旅行中を通して、ユダヤ系のアイデンティティの強さには驚かされた。特に服装、言語、「約束の地」に対する思いについてまとめる。
<服装>
イスラエルにはUSやヨーロッパから移住してきた人や、その子孫が多く住んでいる。エルサレムの町に入ると、まず、黒服に身を包む超正統派のユダヤ教徒が目に付くようになる。男性は大きな黒い帽子を被り、白いシャツに黒いコートを羽織っており、ヒゲとモミアゲが伸びている。女性はひざ下丈の黒のスカートで襟付きシャツを着ている。
超正統派ユダヤ教徒の男性、女学生
嘆きの壁で祈る人々。
超正統派の方々も多く見られる。
なお手前でカジュアルな服装をしているのは観光客。観光客でも中に入ることができる。嘆きの壁の入り口に観光客用のキッパが置いてある。
ユダヤ教徒が多く住む通り(バスの中より)。
また、服装は私たちと同じだが、日常でキッパという帽子を被る人々がいる。
エルサレムの通り。前を歩く男性がキッパを被っている。
キッパを被らないユダヤ教徒も多い。
<言語>
ユダヤ教徒はヘブライ語を話す。英語を話せる人は多いが、ユダヤ教徒同士で話すときはヘブライ語に切り替えていた。
ユダヤ系の居住区では、電車やバスの行先表示、スーパーに並んでいる物までヘブライ語の記載が基本だ。スーパーで陳列されたものを見ても、何か分からないことがよくあった。英語を話す人が多いのに、英語を併記しないのは彼らのこだわりのように思えた。
現地の食料品。デーツシロップ、デーツの実、ワイン。
<信条>
イスラエルにいるユダヤ教徒は、イスラエルが聖書の「約束の地」であるという思いを持っている。イスラエルの建国の歴史やシオニズム運動は学校で教わるが、実際に目の前にいる人が「約束の地だ」「自分たちのルーツだ」と言うのを聞くと、その想いの強さに圧倒される。
例えば、参加したバスツアーのガイドはUSからの移民であった。しかしイスラエルがユダヤ教徒のルーツだから移住してきたという。
それまで育ってきた国を離れて外国に住むのは、大変な労力がいる。気候が違うから適用するのは大変だし、新しい仕事だって見つけなければいけない。それまでのユダヤ教徒への抑圧の歴史を見れば、ユダヤ教徒にとってそんなことはハンデにもならないかもしれない。しかし私にとっては、シオニズム運動でイスラエルに移住してきた人々は皆、相当の覚悟を持って移住してきたように見えた。
旅行者にもユダヤ教徒がいる。英語のバスツアーに参加したせいもあるが、欧米からの旅行者にはユダヤ教徒だからイスラエルに来た、という方々が1/4程度いた。自分たちの宗教との結びつきを感じてイスラエルを訪れているのだ。
旅行を通して、まさしくイスラエルの土地はユダヤ教徒のアイデンティティの一部なのだ、と実感した。また、ユダヤ教徒はようやく手にした土地で自分たちの理想の国を作ろうとしているのだということを、イスラエルの人々と話すなかで感じることができた。そして、彼らの「約束の地」に対する愛着の強さが、パレスチナ自治区との和平を難しくしているように思えた。