バスと宗教

 日本では考えられないが、エルサレムでは宗教によって居住区が分かれている。各居住区を跨いで移動するのは全く問題ないのだが、居住区ごとに違いが大きく、交通機関まで異なる。


 旅行者がイスラエル側で利用するのはユダヤ系の交通機関になる。空港からエルサレムへバスが通っており、エルサレム市内にも路面電車、バスがある。行先表示はヘブライ語、聞こえてくるのもヘブライ語、乗っている人々は所謂白人が多い。SuicaのようなICカードで乗車でき、綺麗で使いやすい。

 

 一方、アラブ人居住区に入ると、アラブ系のバスが走っている。その名もアラブバス。パレスチナ自治区へは、同じイスラム教徒のアラブ人が運営するアラブバスを使って行く。

 

 なお、ユダヤ教系のバスはエルサレムの街中を走っているが、パレスチナ自治区行きは一本もない。バス路線から「パレスチナなんて認めない」というユダヤ教徒の考えを感じ取ってしまった。

 

 アラブバスのバスターミナルは、エルサレム旧市街の北側にある。バスに乗ると、客は全員アラブ系だった。アジア人は私だけ。スカーフをしていない女性も私だけ。ホテルから旧市街に来るまでのバスはユダヤ系のバスで白人だらけだったので、バスを乗り換えるだけで別の国に来たような感じを受けた。古い観光バスのような車体を使っており、ボロボロだった。

 

 この国には交わるという発想がないんだろうか。
少なくともイスラエル国内であれば、ユダヤ系・アラブ系の両方が使いやすい交通機関があってもいいと思う。しかし、ユダヤ系とアラブ系の格差は一目瞭然で、ユダヤ系の交通機関の方が圧倒的にお金がかかっている。おそらくユダヤ系とアラブ系ではお金の出所(政府か企業。詳細不明。)が違い、資金力のあるユダヤ系の方が新しい電車やバスを揃えられるのだろう。このようにユダヤ偏重となっているところに、宗教的な分断と、解決の難しさを感じた。