死海の泥を売る
旅行中、死海に浮くという素敵な体験をすることができた。死海はイスラエルとヨルダンの国境にある。イスラエルから死海ツアーが出ていて、私はエルサレム発のツアーで死海とマサダ要塞を巡るものを選んだ。ちなみに、レンタカーでも2時間あれば着くので、自分でいく人たちもいるらしい。
8時過ぎにエルサレムのホステルの裏でバスに乗ってから、ヨルダン渓谷を目指してバスは猛スピードで走る。途中、海抜0m地点で下車して記念写真を撮るというイベントもあった。
標高がどんどん下がるので、次第に蒸し暑くなっていく。エルサレムは海抜700mほどで、死海は-430mだ。気温は海抜100mごとに0.6℃上がるから、計算では7℃近く上がることになる。しかしエルサレムは風が強く乾燥して寒かったのだが、死海は湿度が高く風も穏やかなので、体感では10℃以上変わった気がした。
ひたすら茶色い山に囲まれた道を走っている間、死海に対する期待は否が応でも高まっていく。青い海が見える晴れたビーチで、死海に浮きながら写真を撮る。そんな様子を想像したらテンションが上がって仕方なかった。
死海が見えた。
え、灰色?
道の向こうに見える死海は私の想像した海の色から程遠く、重たい色をしていた。一瞬、汚染しているのではないかと思う色だ。しかも湿度が高く曇っている。周囲は植物がほとんど生えておらず殺風景だ。インスタ映えからはほど遠い。
死海に着くと、さすが世界に名だたる場所だけあって、よく整備されていた。多くの観光客が水着で思い思いに過ごしていた。ビーチのそばには「世界一標高の低いバー」もあり、多くの人が昼間からたむろしている。ビーチには人がごった返しており、みんな浮きなが写真を撮ったり、ビーチの椅子でのんびり過ごしていた。死海は塩分濃度が濃すぎて20分以上は入れないので、近くでゆっくりするのがメインになるらしい。中には顔に泥を塗りたくってお化けみたいになった女性もいる。死海の泥は、水分が蒸発してミネラルが凝縮されているのでお肌にいいという。だから顔に塗っているのだ。
お土産物屋では死海の泥を使った化粧品が大人気だ。泥そのものも売っていた。1パック$18。高い!しかし人気なのか店頭に山積みになっていた。死海から泥をすくって売るだけのビジネスとは…。死海の灰色はミネラルたっぷりの泥の色で、死海のビジネスパーソンからしたら黄金色にも等しいのだろう。
死海のビーチから少し離れた場所には、死海コスメの工場もある。AHAVAという会社で、キブツというイスラエルの集団農業の共同体から発展した。ツアーで連れていかれたのだが見ていると保湿やアンチエイジングの化粧品が充実しており色々と欲しくなってしまった。
灰色の海は観光資源であり、また化粧品産業を支えていた。
<写真>
◆死海のビーチ
死海のビーチ
世界一標高の低いジューススタンド
世界一標高の低いバー
死海の泥。1個18ドル。4個で36ドルとかなりの割引。
◆AHAVA社
化粧品工場。出荷作業を行っていた。
化粧品
◆海抜0メートル地点
「SEA LEVEL 0」。Eが抜けている。